ドイツのピアニストであるガンビーラは、inprovisation、つまり即興演奏しかしない事で知る人ぞ知る存在である。当然の事ながらコンサート活動が中心で録音はほとんどない。その意味で非常に貴重なCDである。この音楽は一輪の蕾が開き、満開の花となり、そして散っていく過程を40分あまりの演奏で表現したものである。

 日本ではクラシックというよりヒーリング音楽のカテゴリーに入れられる事が多いので余りなじみがないが、素晴らしいピアニストである。アルゲリッチとは全くの反対で、静謐という言葉がまさにふさわしい。

 私はこの人が来日していたとき、偶然あるホテルでお会いしたことがあった。CDを持っている、とたどたどしいドイツ語でしゃべるととても喜んでくれた。そして私のために一曲弾いてくださった。

 私は即興だと思っていたが、意外にもバッハのフランス組曲第5番であった。通常速いテンポのBourre(ブーレー)をアダージョで弾いたのには驚いたが、今まで聴いたどのバッハよりもチャーミングであった。若き日の貴重な思い出である。

ガンビーラ CD インディペンデントレーベル 1989/05/01 ¥2,940

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