椿姫は現在でこそ3大オペラの一つとして数えられるが、1853年の初演では大失敗に終わった作品である。主人公ヴィオレッタは実在の人物がモデルであり、作曲者ヴェルディは「優雅な容姿と情熱的な声を持った若手にやらせるべきだ」と劇場側に主張した。しかし実際に起用されたのは体重が130kg(ホンマかいな…)もある巨漢のソプラノで、最後に結核で死ぬとはとても思えなかったそうである。

 だが私は(それもあるだろうが)少し違う見方をしている。このオペラは第一幕こそ伝統的なオペラの形式に則って書かれているが、第2幕の途中(ヴィオレッタとジェルモンの二重奏あたり)からリリックな声と、どちらかと言えば劇の表現に近い演技力と表現力が必要になってくる。つまり今までになかった革新的な手法を用いたために当時の聴衆に受け容れられなかったのではないか、と思っている。

 このオペラも色々聴いたが、ヴェルディの言う「優雅な容姿と情熱的な声を持った」歌手は、私の聴く限りマリア・カラス以外にはあり得ない。だが残念ながらカラスの全盛期の録音には満足のいくものがない。
 しかし最近になってようやく(今はマダマダだけど)カラスの領域に近づきうる可能性を持つ歌手が出てきた。デミトラ・テオドッシュウという名前はちょっと覚えておいた方がいいのかも知れない。

 ちなみに「椿姫」は原作の小説の題名である「椿を持った女」からの訳であるが、ヴェルディがつけた「La Traviata」という題は「道を踏み外した女」という意味である。内容から言ってこっちの方がぴったりだと思う。

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