気になる訴訟?

2006年2月1日
毎日新聞より

群馬大医学部の05年度入試で、年齢を理由に不合格の判定を受けたのは不当として、東京都目黒区の女性(55)が群大に医学部医学科の入学許可を求めた訴訟の第4回口頭弁論が27日、前橋地裁であった。

原告側は訴訟形態を民事から行政訴訟に切り替えることなどを盛り込んだ訴状変更申請書を提出したが、同地裁はこれを留保した。原告代理人によると、国立大学法人が行政訴訟の対象となるのは前例がないという。

 原告代理人は「我々としてはどちらでもいいから認めてもらいたいということ」と話し、民事を継続したまま行政訴訟を起こすことも視野に入れ協議を進める。同地裁は今後、行政訴訟の対象に国立大学法人が適格かどうかを含めた申請の可否を検討するという。

 また原告側は27日、不合格判定の無効確認も訴状に追加することを申請。さらに女性が受験に至る経緯や不合格の理由を職員に尋ねた時の詳細を記した陳述書を提出した。

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少し分かりにくいですが、この訴訟はそもそも「裁判として成立するか」という問題が含まれています。

 もともと大学には自治が認められているので「合格を決めるのは自律的な規範を有する大学の裁量であり、一般市民の法秩序とは関係がないので、司法による審査の対象にならない」という考えがあるからです(部分社会論と言います。富山大学単位不認定事件という有名な判例があります)。

 原告の代理人が「我々としてはどちらでもいいから認めてもらいたいということ」と言っているのは、恐らく裁判官側から、裁判所としては上記の理由から訴訟として介入したくない(つまり当事者で話し合って解決してくれ、ということ)というような事を言われているのだと推測されます。

 もし司法が判断をすれば、入学を決めるのは大学でなく国家の裁量だと言うことになります。しかも年齢の平等を無差別に認めうることになれば、他の契約関係においても大きな影響がでてきます。

 たとえば、学校の教員には年齢制限がありますが、年齢の平等が認められると、教育委員会は40歳の受験は認めるが、41歳の受験は何故認めないかいちいち理由を付けなければいけません。アルバイトの採用にしたってそうですね。かえって社会に大きな混乱を起こしかねません。

 差別は認められるべきではないのは当然ですが、それに対して行政や司法が過度に介入すると逆差別を生み出しかねません。だからなんとか当事者同士で解決してくれ、というのが裁判所の意図だと考えられます。だからこんな記事になったのでしょう。

 医学部では地方枠や学士入学枠を設けるところが多いですが、これにしたって、このような制度のために本来その大学に入る実力をもつ他県の学生や現役生を締め出す制度と受け取ることも出来ます。だから入学の裁量権というのは思ったより難しいものだと感じています。

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